歴史の中の光・13 


『攻勢終末点=資金調達力を常に念頭に』

『攻勢終末点』という軍用語がある。どんな意味なのか。
 戦の勝敗は、補給力の優劣によってきまる。
 進攻していけば、その分、兵站(へいたん)基地から遠のき、補給力は逓減(ていげん)していく。反面、懐が深い敵勢ならば、基地に近づく分だけ補給力がます。この交差点が勝敗の分岐点で、それ以上進撃すると敗戦につながる。1812年のナポレオン、1941年のヒットラー・ナチス軍のロシア(ソ連)侵攻の失敗─亡国はこれに基づく。他国ばかりではない。太平洋戦争における日本陸軍のガタルカナル、ニューギニアの餓死的敗北、ビルマ。インパール作戦での悲惨的退却の主因でもある。
 しかし、緒戦の勝利に驕っているとき、耳元で「追撃して戦果拡大」「攻撃は最大の防御」といったささやきが聞こえると、どうしても「それいけドンドン」になってしまう。
 ところが、これを遵守して勝利をもぎとったのが、1904〜5年の日露戦争時の満州軍総参議長・児玉源太郎大将であった。05年3月10日の奉天大合戦で辛勝すると、そこで兵を納め、防御に徹し、時局の転換をまつ。そして、9月のアメリカ大統領シオドアル・ルーズベルトの斡施による休戦をかちえたのである。
 これに較べ、最近の日本経済人はどうであろううか。経済界における「攻勢終末点」は「資金調達力の限界」であろう。
 バブルに乗じて、補給力─資金調達力の限界を越え拡張一本。今日の惨状をむかえてしまった。攻勢終末点を暴走によって突破、会社を倒産させたのは、ひとり、そごうの水島広雄元会長だけではない。